■北京五輪の選手団の食品の安全は、提供前にハツカネズミにお毒味させることで確かめる。これ本当。ハツカネズミってすごく弱い動物なので、微量の毒物でも反応するそうだ。炭坑のカナリアみたいなもんだな。化学検査だと結果がでるまでに時間かかるし、とりあえず安全を守る、という点では、一番クイックな方法だろう。今後、中国産冷凍食品の安全検査が大変だ、どうしようと思われている輸入食品企業の方。市販の前にいくつかのサンプルをハツカネズミに食べさせてみてはどうだろうか?サリン事件のとき、警察がカナリアをつれていてびっくりしたが、実は原始的な方法ほど信頼できるもんなんだ。毒ガステロにはカナリア、毒食品テロにはハツカネズミ!食品企業のオフィスで、ハツカネズミを飼うなんて、癒しにもなるし。社員交代で飼育当番なんかしちゃったりして、小学校のころを思い出すね。動物愛護団体には怒られそうだが。
■閑話休題。ハツカネズミをお毒味役に、というのは冗談だとしても、中国産食品の安全性をいかに確保するかは、今後、日本企業と日本消費者にって大きな課題となるだろう。確かに、ホントにチャイナ・フリーが実現できるなら、それもアリだろうが、そうなると、中国でも日貨排斥運動がおきたりして、外交的にも経済的に、かなり大きな禍根を残すことになりそうだ。五輪開催時、安心して日の丸を振って応援するためにも、日中関係がぎすぎすするのは、避けたいところだ。
■ギョーザ事件はまだ解決していないし、食品テロと決まったわけではない。だが、この事件の決着がいかなる形であろうと、「中国産品の安全」と日中経済という、ヘビーな課題が浮上してくることは確か。というわけで、今エントリーはこの問題について、ちょこっと考えてみたい。ちょこっとだけね。
■ハツカネズミ無しで、食の安全確保するには?
JTフーズとトヨタ、ユニクロの違いから…
結局、安全は、人なんだ
■実は、このテーマについて、ウォールストリート・ジャーナルがこんな記事を書いていた。
(要約)
■日中経済貿易が発展していくについて、日本企業が直面する難題とは、いかに日本ブランドのもとで作られる中国製品の管理を行うかだ。最近、日本で中国産冷凍ギョーザが引き起こした食中毒パニックは、中国輸出食品の名声の汚点となった。中国品質管理検査検疫総局の魏伝忠副総局長は「中日関係の発展を望まぬ一部の少数分子が極端な手段にでた可能性を排除できない」、と語っている。
■JTフーズは、早速、日清と冷凍食品業務の合弁計画を白紙に戻すなど、毒ギョーザ事件で大きな影響を受けている。
日本は香港を含む中国にとって、米国を超える最大貿易パートナーになっている。過去五年、日本の対中国輸入は72%増、昨年の輸入額は1422億㌦規模だ。
■日本人口の縮小は、日本市場の発展を妨げると同時に労働力が減少、中日貿易は日本の発展のキーポイントになっている。中国は日本の重要な輸出先でもあり、とくに工業部品、機械設備などの輸出先として成長してきた。一方で日本消費者は安い輸入食品で金を節約し、その節約したぶんの金は、より有用な部分に使うことができるようになっている。
■ただし両国は環境基準、産品の合格基準が同じでない。これが日本企業の一大難問なのだ。
■この日本ブランドの中国産の品質管理について、自動車大手のトヨタは極端な手法をとっている。生産センターを設立すると、トヨタは部品供給工場も周辺に、長期契約の(傘下の日系)工場をひっぱってきて、地元企業からは供給しない。トヨタは企業内部のエンジニアを使い、日本から派遣させるのだ。
■だからトヨタは品質基準を維持しているが、エンジニア不足などで量産できないなどの困難があり、GMとか、フォルクス・ワーゲンに遅れをとっている。
■日本の服飾小売大手、ファースト・リテイリング(ユニクロ)は、日本技術者による専門家チームが、上海、深センの両中国工場で品質監督および工場労働者の研修を責任をもって行っている。
■JTフーズは多くの食品企業と同様、餃子の加工、包装を現地企業にまかせ、、自分自身は遠隔操作で監督、コントロールしていた。昨年、JTフーズが生産工場に対して行った監督は、品質検査人を二回派遣しただけ。JTフーズは、毎日送られてくる品質報告書を読むだけだった…。
(以上、要約)
■この記事を読んで、う~ん先を越されちゃったよ、と思った。この指摘は、けっこう本質を突いているかも。もっとも日本メディアがこういう問題を論じるには、やはり事件自体が解決してからになるだろうが。
■現地日系企業が、自らのブランドの名誉を守るために費やしている苦労と金と時間を比べて、JTフーズは、製造、包装、梱包の管理を完全に中国現地企業にゆだねていた。この差はなにかというと、企業がその現地工場に投資して、製造現場に人を派遣しているかしていないか、という点だ。それと、中国を市場とみているかみていないか、という点だ。
■自ら金と時間をかけ工場を立ち上げれば、当然、そこでできる商品の品質管理は自らのブランドの名をかけて責任を負う。同時に、現地で商品を売るということは、中国人のために商品を作っている、ということだ。安い労賃で、特別上等の食品を日本人のためだけに作らせ、日本だけに輸出するのとは、働く中国人のモチベーションや感情が違うだろう。
■自分が直接取材した例をあげよう。2005年、日中関係が靖国問題で最も先鋭化した時期におきた、日貨排斥デモで一番やり玉にあげられたアサヒビールは伊藤忠、住友化学と共同で15億円出資して06年、山東省莱陽市に朝日緑源という農場を作った。「2016年までに投資を回収する」という悠長さからみても、ビジネス的なアタリをねらった投資ではなさそうだ。
■乾祐哉社長(日本人)にきいてみると、その通りで、むしろアサヒビールのブランドイメージをあげる宣伝作戦の目的が大きい。さらに、理想的な農業の形を現地の農民に教え、農民の育成という一種ボランティア的なねらいもある。そうすることで、山東省政府にも恩を売れるし、現地の親日感情も高まるし、長い目でみればプラス効果が大きい、というわけだ。
■ここの農場を現地取材して驚いたのは、社長が朝誰よりも早く(午前5時とかそのくらい)畑にでたりして、社員やアルバイト社員の現地の農民に、声をかけたり、いっしょうけんめいコミュニケーションを図ろうとしていることだった。アサヒビールから派遣された、ビール作りしか知らなかった人がいきなり、農作業。
■農業指導を行っている日本人は、JICAの元海外青年協力隊員で途上国で農業指導経験のあるつわものばかりで、片言の中国語でやはりこちらも、農民と対話しながら一緒に農場で汗を流していた。日本人がこういうことをして、何を教えているかというと、自分の作った商品に誇りを持つということ、だという。収穫した農作物をつかって、農場でガーデンパーティとかして、みんなで食べたこともあるという。そこの場で、自分たちの作ったものが、いかにうまいか、いかにいいものかを大いに喧伝して、その労を称えたりする。実際に、そこで働いている農民に取材すると、りっぱなイチゴがつくれてうれしいとか、そういう感想が飛び出してくる。ちなみに、ここで生産された企業は、青島市の高級スーパーで売られる。それなりに高い値段だが、所詮食品なので、一般の中国人もがんばれば買える値段だ。
■なるほどこの企業は、日本的な人材育成を実践しているのだな、と思った。日本では、社長がトイレ掃除を自らやったり、率先して店頭に出て消費者に頭をさげて迎えたりする。それが理想的かどうかは、議論の余地があるにしても、こういうのは日本人的といっていいだろう。
■中国では、私儲ける人、あなた働く人、という感じで管理職、経営者と労働者の間には、壁がある。もちろん、給料の壁も高い。数十倍から数百倍?工場で働く出稼ぎ農民が出世して、工場幹部になるということは聞いたことがないし、工場幹部がラインにでてきて一緒に汗を流す、ということも、あまり聞かない。だから、中国でおきる労働争議は、けっこう激しい。幹部室を占拠して立てこもる、とか、親企業から派遣された社員を人質にとって、賃上げ交渉なんて武闘派の事件もおきている。中国に投資をし、中国をよく知る日系企業の多くは、中国の最大のカントリーリスクが、潜在的な反日感情であることを知っている。この場合の反日感情は、もちろん江沢民政権時代の反日教育も影響あるが、金持ち、リッチマンの象徴としての日本製品、日本人への反感だ。そのため、中国を知る日系企業の中は、希望工程で中国の地方に小学校を建てたり、いろいろ慈善事業もやったりして、一生懸命親日感情を育てようとしているところも多い。
■私が思うに、日本の高度経済成長期をささえたのは、日本人的精神論で培われたサラリーマンの会社に対する忠誠心や愛社精神、自社商品への愛着ではなかったかと思う。この日本的サラリーマンの愛社精神はバブル後の強烈なリストラの嵐で、くずれさり、今はサラリーマンと企業は欧米風のドライな雇用関係に変わっていった。どちらがいい悪いとは言えないが、70年代末、ジャパンアズナンバー1と呼ばれた、日本の技術、品質レベルの高さは、愛社精神旺盛な一介のサラリーマン、工場労働者らが支えたのではないだろうか。そして、そういう愛社精神や自社商品への愛着が崩れたから、日本でも賞味期限の偽装とかそういう問題が相次いでいるような気がする。勝手な解釈かもしれないが。
■中国で、こういった日本人的な情緒を育てられるかどうかが、中国製品の安全性を高める鍵なのか。それは、わからない。でもJTフーズのえらいさんたちが、、自分たちの名前で日本の消費者に提供している食品の製造工場で、労働者たちがどんな思いでギョーザを作っているか、気にもかけなかったとしたら、それは責められるべきではなかったかと思う。かりによ、国慶節休みに働いている人たちのために、JTフーズの人や工場長が生産現場におりて、「みなさん、ご苦労様!私もいっしょにギョーザを包みます!今日は仕事を早めに終えて、作った餃子でパーティしましょう」なんて、言葉をかけたりするような工場であれば、こういう事件は起こらなかったかもしれない。
■昨年、北京五輪の選手団向けに「五輪ブタ」というオーガニック資料で育てられた特別のブタが飼育されている、という話を一部養豚企業がぽろっとしゃべったために、ネットでは、「オレたちには、感染症のブタや抗生物質漬けのブタ肉をくわせておいて、外国人のためには、そんな高級なブタを用意するのかよ」と不満が爆発して、あわてて、そんな五輪ブタはいません、と前言を撤回した騒動があった。この事件は、今の中国人の不満は、食品物価があがりエンゲル係数の上昇に悩まされている一方で、外国人のために安全な食品を比較的安価に提供している、という状況に矛先が向かいやすいことを示した。食べ物の恨みはこわいのだよ。
■信用や安全どうやってつくるのだろう。今回の事件の原因が、人為的犯罪であれ事故であれ、天洋食品の工場が原因地点であるとすれば、HACCAPとISOといった安全認証は実は、気休めにすぎない、ということになる。信用も安全も、結局人がつくる、という以外ないのだ。
■つまり、安全な食品を中国で作るには、安全な食品を作ることのできる人を創らねばならない、ということだ。目下、私の見る限りでは、中国企業であれ、日系企業であれ、ほとんどが、「作る人」を大事にしていない。農民を大事にしていないし、工場労働者を大事にしていない。ちょっとは、労働者を大事にしなきゃ、ということで、今年から労働者の権利保護を盛り込んだ労働契約法が実施されたわけだが、その結果、昨年から今年にかけて各地で企業と労働者の関係が、先鋭化している。
■信頼できる人を創る、育てるというのは、企業として一番金も時間もかかることだろうから、結局商品の単価はあがることになる。で、なんだ、日本で作るのと、あんまり変わらない価格になっちゃった、という風になれば、純国産の食品や日本の農産物にも、競争力がでてきて、結果的に自給率があがるかもしれない。もちろん、そうならないかもしれないけど。
■あと作る人が心を込めて作るには、作る人が同時に消費者でなければならないのではないだろうか。貧富の差があるから、確かに高級食品を作っている工場で、労働者がそこで生産された食品を食べる機会はめったにない。でも、春節くらいは、自分で買って食べようとか、息子の誕生日には買ってやろう、とか、そういった気持ちをこめて作れる商品でないと、本当はダメなんじゃないだろうか。
■まあ、そういう理想をいっても、今の中国の経済構造やシステムがすぐに変わるわけではないし、貧富の差は広がっているし、しかも日本も貧富の差が広がって、安価な中国産食品に頼らざるを得ない家庭は多い。結局、食品テロを防ぐために、すぐさま出来そうなことは、日本政府として、原料原産国表示の徹底とかで、消費者が自分のお財布と価値観にあわせて商品を選べるだけの情報提供をするしかない。で、徐々に、上記の中国の食品業界(食品だけに限らないが)の問題点を改善してゆく方法を考える。
■あるいは、各ご家庭で、ハツカネズミを飼う?一家に一匹、お毒味役。


by nihonhanihon
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